この記事を書いた人:日本ソルトコーディネーター協会代表理事 青山志穂
目次
原料によって塩を分類すると何種類あるの?
塩は原料によって分類した場合は次の6種に分けることができます。
- 海水塩
- 岩塩
- 湖塩
- 地下塩水塩
- 調味塩
- 再製加工塩
製法(結晶工程)によって塩を分類した場合は何種類あるの?
塩を製法によって分類すると次の2種類に分けることができます。
- 釜炊き(煎ごう)塩
- 天日塩
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塩の種類①海水塩
海水塩は、海水から作られる塩であり、海水を蒸発させて塩分を結晶化させることにより生産されます。
この方法は、太古の時代から続く伝統的な製法であり、世界各地の沿岸部で行われています。
海水塩にはいくつかの特徴があり、その生産方法や含まれる成分によって他の塩と区別されます。
藻塩や「食塩」は海水塩に分類することができます。
成分と味
海水塩は、ナトリウム以外にも、マグネシウム、カリウム、カルシウムなどのミネラルを豊富に含んでいます。
ナトリウム以外のミネラル成分が多く含まれる場合は、味わいに深みがあり、風味が豊かになると言われています。
また、苦味や甘味など、独特の風味が感じられることもあります。
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生産方法
海水塩の生産方法には、自然蒸発を利用したものと、人工的に加熱蒸発させるものがあります。
自然蒸発を利用した方法では、海水を塩田に導き、太陽の光と風を利用して水分を蒸発させます。
この方法では、生産過程で時間がかかりますが、エネルギーコストが抑えられるとともに、自然の力を利用することで環境への影響を最小限に抑えることができます。
一方、加熱蒸発法は効率的ですが、エネルギー消費が大きいという欠点があります。
用途
海水塩は、料理において広く利用されます。
特に、その豊かな風味は、料理の味を引き立てるために重宝されます。
また、天然のミネラル成分を含んでいるため、健康志向の高い人々にも選ばれることがあります。
さらに、美容製品や入浴剤としても利用されることがあります。
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塩の種類②岩塩
岩塩は、数百万年から数億年前の海水が蒸発し、その後地殻の動きによって地下深くに埋没した結果、形成された塩化ナトリウムを主体とした鉱床から採掘される塩です。
このような経緯でできた岩塩は、地下の岩塩層から掘り出されることから、その名がつけられています。
岩塩は、食用だけでなく、工業用途や道路の凍結防止など、幅広い用途で利用されています。
成分と特性
岩塩は、主に塩化ナトリウムで構成されていますが、採掘地によって微量のミネラルや成分が含まれている場合があります。
これらのミネラルや成分が岩塩に独特の色を与えたり、微妙な風味の違いを生んだりします。
例えば、ヒマラヤ岩塩はピンクがかった色をしていることで知られていますが、これは鉄分や赤土によるものです。
生産方法
岩塩は、主に採掘によって地下の岩塩層から取り出されます。
坑道を掘って直接岩塩を掘り出す「乾式採鉱法」と、地下の岩塩層に水を注入し、溶解させた塩水を地上に汲み上げて塩を結晶化させる「溶出抽出法」という二つの方法があります。
乾式採鉱法では、巨大な岩塩の塊をそのまま取り出すことができるため、岩塩を採掘した跡地には大きな空洞が空き、そこが観光名所として利用される場合もあります。
用途
岩塩は、基本的にその純度が高いことから、食用塩としての利用のほか、化学工業の原料、道路の凍結防止材、水処理のための塩素の製造など、多岐にわたる用途があります。
また、岩塩に含まれる微量のミネラルが健康に良いとされ、健康補助食品やバスソルトなどの美容製品にも使用されています。
自然が長い時間をかけて作り出した岩塩は、その独特の特性を生かして人々の生活のさまざまな面で利用されています。
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塩の種類③湖塩
湖塩は、飽和塩水で満たされた湖の水から作られる塩で、主に内陸の塩水湖や塩湖で生産されます。
乾期になると塩が自然に結晶化するのでそれを採掘したり、湖の底に沈んだ結晶を採取したりします。
海水塩や岩塩と同様に古くから人々によって利用されてきましたが、その生産は特定の地理的環境を必要とします。
湖塩の特徴は、その採取される湖の地質学的および気候的条件に大きく依存し、これによって湖塩の化学組成や風味が決定されます。
成分と特性
湖塩は、塩化ナトリウムを主成分としつつも、採取される湖によって異なるミネラル成分を含んでいます。
これにはマグネシウム、カルシウム、カリウム、硫酸塩、および微量の他のミネラルが含まれる場合があり、これらが独特の味わいや色を生み出します。
例えば、イスラエルの死海は、その長い歴史の中で塩化マグネシウムの濃度が高くなっているため、採取される塩にも塩化マグネシウムが多くふくまれています。
いくつかの湖塩はピンク色をしていることがあり、これは含まれる鉄分や他のミネラル、好塩菌や微生物の繁殖によるものです。
生産方法
湖塩の生産方法は、その採取される湖の気候に依存します。
乾燥地帯に位置する塩湖では、太陽の熱で水分が自然蒸発しやすく、この過程で塩分が結晶化します。
この結晶化した塩を採取することで湖塩が生産されます。
この方法は非常にエネルギー効率が良く、自然環境に優しいとされています。
一方で、より湿潤な気候の地域では、水分蒸発のために追加のエネルギーが必要になる場合があります。
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用途
湖塩は、食用にももちろん使用されていますが、
健康や美容製品への関心の高まりに伴い、バスソルトやスキンケア製品にも使用されるようになっています。
湖塩は、その生産地の自然環境に根ざした独特の特性を持ち、その味わいや用途において他の塩と区別されます。
環境に配慮した持続可能な生産方法により、地球上の限られた資源を守りながら、私たちの食生活に貴重な彩りを加えています。
塩の種類④地下塩水塩
地下塩水塩は、地下深くに存在する塩分を含んだ水(塩水)から製造される塩で、その特徴や生産方法は地域の地質学的条件によって大きく異なります。
地下塩水は、過去の海水が地下に閉じ込められたものや、岩塩層から溶け出した塩分が含まれた水など、さまざまな起源を持つことがあります。
この地下塩水を汲み上げ、蒸発や結晶化させることによって塩を製造します。
成分と特性
地下塩水塩は、塩化ナトリウムを主成分としていますが、地下から汲み上げた塩水の成分によって、マグネシウム、カルシウム、カリウム、硫酸塩などのミネラルを含むことがあります。
これらのミネラルの種類と含有量は、採取される地下塩水の源となる岩塩層や地質によって異なり、そのため地下塩水塩には地域ごとに独特の特性があります。
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生産方法
地下塩水塩の生産には主に二つの方法があります。
- 地下の塩水層に井戸を掘り、そこから塩水を汲み上げる方法
- 地中に埋没した岩塩が伏流水で溶けて塩水溜まりを形成し、それが地上に湧き上がってくる
どちらの方法でも、汲み上げた塩水を蒸発・結晶化させて塩を製造しますが、その過程でエネルギーを要するため、生産コストや環境への影響を考慮する必要があります。
用途
地下塩水塩は、食用塩としての利用のほか、工業用途にも使用されます。
食用としては、その独特の風味やミネラル含有量によって、料理の味わいを豊かにすることができます。
工業用途では、化学工業の原料や、水処理施設での使用など、多岐にわたります。
地下塩水塩は、地下資源を活用した塩の生産方法として重要な役割を果たしており、その特性や用途は、採取される地域の地質学的条件によって大きく異なります。
地域ごとの特性を生かした生産と、環境への配慮が求められる領域です。
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塩の種類⑤調味塩
調味塩は、塩に様々な香辛料やハーブ、調味料を加えて風味を高めたものです。
一般的な塩と比較して、料理に特定の風味を加えたり、味のバリエーションを広げたりすることができるのが特徴です。
このような調味塩は、特定の料理や目的に合わせて様々な種類があり、簡単に料理の味を引き立てることができます。
成分と特性
調味塩の基本成分は塩ですが、追加される香辛料やハーブの種類によって様々な風味が生み出されます。
例えば、にんにく塩、セロリ塩、チリ塩、トリュフ塩などがあり、これらはそれぞれ異なる風味を持ちます。
また、焼肉や天ぷらなど特定の料理に合わせた調味塩も市販されています。
生産方法
調味塩の生産には、まず高品質の塩を選ぶことが重要です。
その後、選ばれた香辛料やハーブを塩に混ぜ合わせ、均一になるようによく混ぜます。
香辛料やハーブは、乾燥させたものが使われることが多く、これにより調味塩は長期間保存が可能となります。
混合の方法や比率は、目指す風味や用途によって調整されます。
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用途と利点
調味塩は、単に料理に塩味を加えるだけでなく、香りや風味を豊かにすることができるため、多くの料理で幅広く利用されます。
特に、シンプルな料理に少量加えるだけで、味に深みや個性を出すことができます。
また、料理の仕上げに振りかけることで、見た目にも美しさを加えることができます。
注意点
調味塩を使用する際には、その塩分含有量に注意する必要があります。
調味塩には塩以外の成分も含まれているため、塩分の摂取量を調整する際には、使用する調味塩の成分を確認し、適切に使用することが重要です。
調味塩は、料理に簡単に多様な風味を加えることができる便利な調味料です。
塩の種類⑥再製加工塩
再製加工塩は、塩を原料に加工を加えて生産される塩です。
「再製」という言葉から、人工的なイメージを持たれることが多いですが、専売制度の下で海水からの製塩が禁じられていた時代に、なんとか昔ながらの塩を再現しようと生み出された製法であり、現在でもコストパフォーマンスに優れた塩として多くの人に愛用されています。
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特徴と利点
- 資源の再利用
再生加工塩の最大の特徴は、廃棄される塩分を有効活用し、資源の無駄遣いを減らすことです。これはサステナビリティの観点からも重要であり、資源の循環利用を促進する方法の一つとされています。 - 環境への配慮
再生プロセスを通じて、廃棄物の量を減らし、環境保護に貢献します。また、新たに塩を生産するためのエネルギーや資源の消費を削減することも可能です。 - 多様な用途
再生加工塩は、その品質や加工の度合いに応じて、食品加工用、工業用途、道路の凍結防止材など、幅広い用途で利用されます。ただし、用途は回収した塩分の源となる材料や加工プロセスによって左右されるため、全ての再生加工塩が食用として適しているわけではありません。
生産プロセス
再製加工塩の生産プロセスは、いくつかのパターンがあります。
- 原料塩を洗浄して付着した汚れを落とし、そのあとにがりを添加する
- 原料塩を海水または真水で溶解して塩水にし、不純物を沈殿させ、清浄な上澄みの部分だけを再度結晶化させる。
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釜炊き(煎ごう)塩とは
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天日塩とは
天日塩は、海水や塩水を自然の太陽光と風の力を利用して蒸発させ、塩分を結晶化させることで生産される塩です。
この方法は非常に古くから行われており、エネルギー効率が良く、環境に優しい塩の生産方法として主に海外の沿岸地域で利用されています。
天日塩の特徴は、製造過程に人工的な熱処理を加えず、自然のエネルギーのみに依存している点にあります。
生産プロセス
天日塩の製造プロセスは以下のように進みます。
- 海水の採取
清潔な海域から海水を汲み上げます。 - 濃縮
海水を浅い塩田に引き入れ、太陽光と風による自然蒸発を利用して水分を少しずつ蒸発させ、塩分を濃縮します。 - 結晶化
塩分濃度が高まると、塩の結晶が形成され始めます。この結晶化した塩を収穫します。 - 収穫と乾燥
結晶化した塩を収穫し、さらに天日で乾燥させます。
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地域性
天日塩は、世界各地で生産されており、地域によって独自の製法や特色があります。
フランスの「ゲランドの塩」や、イタリアの「トラパニ(シチリア)の塩」、日本の「田野屋塩二郎」などが有名です。
海外と日本の塩田には大きな違いがあります。
海外の塩田は、沿岸の広く平らな土地に区画を作り、そこに海水を引き入れて塩水のプールを作り、そこで濃縮・結晶化させるのが一般的です。
大規模なものになると、メキシコのゲレロ・ネグロ塩田のように東京23区と同じくらいの広さのものがあり、この規模の塩田になると、塩の収穫はブルドーザーで行われ、一回の生産量は何万トンにも及びます。
一方日本では、沿岸に広く平らな土地が少なく、また雨が多く湿度も高いため、天日結晶は主にハウスの中に設置した平箱の中に濃縮した海水をいれて行われます。
このため、1箱から収穫できる塩の量は数kg程度とごくわずかです。
一回に収穫できる塩の量に大きな違いがあるため、海外産の天日塩よりも日本の天日塩のほうが価格が高くなる傾向があります。
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