塩コラム

この記事を書いた人:日本ソルトコーディネーター協会代表理事青山志穂

ソルトコーディネーター青山志穂
日本の塩の第一人者で塩の専門家として「一家に三塩、食卓に笑顔を」をモットーに活動している青山志穂先生

食塩とは?

「食塩」というのは、実は商品名です。

「食べる用の塩=食塩」だと勘違いしている人が多いのですが、「食塩」とは公益法人塩事業センターが協力会社に依頼し、製造・販売している塩の商品名です。

日本で製造される「食塩」の原料となる海水は、日本国内各地の海から採取されています。

イオン交換膜(イオン膜)

日本には岩塩鉱床や塩湖がないため、塩の原料はほぼ100%海水です。

また、広い平坦な土地も少なく、降雨量も多い、雨季と乾季がはっきりしない等の諸条件により、大規模塩田での製塩ではなく、海水を釜で炊くという製造方法が主流になります。

「食塩」も、イオン交換膜による海水の濃縮と、真空式釜(立釜)を使用した煮詰め工程を経て製造されます。

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精製塩とは?

「精製塩」は塩事業センターが発売する商品の名前であり、精製された塩の総称ではありません。

「精製する」という言葉が、「不純物を取り除いて目的の物質を純度の高い状態にすること」という意味を持つため、「海水から塩化ナトリウムを取り出した塩」=「精製塩」という呼び方をする人が多いようです。

「精製塩」の原料は、メキシコ産の完全天日塩と水、炭酸マグネシウムなので、「海水から塩化ナトリウムを摂りだした塩」ではありません。

 

食塩と精製塩の違いとは?

食塩と精製塩
食塩と精製塩

 

原材料の違い

「食塩」と「精製塩」は原料が異なります。

「食塩」は日本国内の海水を原料に生産しています。

「精製塩」メキシコの大規模塩田で収穫された完全天日塩日本の水、炭酸マグネシウムを原料に生産されます。

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製法の違い

「食塩」と「精製塩」は製造方法も異なります。

「食塩」の製造工程は、「イオン膜、立釜、乾燥」です。

海水をイオン膜という特殊な膜で濃縮し、それを真空式の釜(立釜)で加熱し蒸発させることで塩を結晶化しています。その後、乾燥しています。

「精製塩」の製造工程は、「溶解、立釜、乾燥、混合」です。

メキシコの大規模塩田で生産される完全天日塩を真水で溶かして、それを真空式の釜(立釜)で加熱して蒸発させて結晶化し、乾燥したあとに炭酸マグネシウムを添加(混合)しています。

なお、「食塩」の製法に関しては、詳しく解説した記事があるのでこちらの記事もご覧ください。

塩(食塩)とアジシオの違いを専門家がわかりやすく解説!10項目で比較してみた!

 

結晶の違い

「食塩」も「精製塩」も結晶体の形は立方体で同じです。

結晶の大きさが異なり、「食塩」は600~150マイクログラムの結晶が80%以上を占め、「精製塩」は500~180マイクログラムの結晶が85%以上を占める、と決められています。

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添加成分の違い

「食塩」には海水のみでなにも添加されていないので、無添加です。

「精製塩」には、炭酸マグネシウムが添加されています。

炭酸マグネシウム
炭酸マグネシウム

炭酸マグネシウムを添加することで、塩が湿気て固まってしまうのを防ぎ、さらさら状態を保つという特徴もあります。

塩に使われる添加物について解説した記事はこちら

無添加の塩?有機の塩?塩に使われる添加物6選!勘違いしている人が多いので説明します!

 

味わいや風味の違い

「食塩」はストレートで強い塩味とクリアなあとあじが特徴です。

「精製塩」も強い塩味とクリアなあとあじですが、炭酸マグネシウムでコーティングされている分、しょっぱいと感じるタイミングが「食塩」に比べて少し遅いのが特徴です。

少量を溶かして使用する際には大きな違いは感じられません。

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使い方の違いは?

「食塩」も「精製塩」も、しょっぱさが鋭いので、揚物や油を多く使う食材におすすめです。

天ぷらと食塩
天ぷらの脂っこさを食塩や精製塩がさっぱり感じさせてくれる

油っこさを緩和し、さっぱりとした口当たりにしてくれます。

両方とも溶けやすいので、口にいれるとすぐ溶けて、揚物を食べた時に最初にでてくる油をしっかりと受けとめてくれます。

もしくは、甘味の少ない果物などに少量加えることで、甘味を引き立てることができます。

この場合は、しっかり溶かすか馴染ませるかするのがおすすめです。

また、「精製塩」のほうが「食塩」に比べて湿気にくいので、塩を使う頻度が低いという人は、「食塩」よりも「精製塩」を選んだほうが、買った時の状態が保ちやすいでしょう。

 

販売価格の違いは?

「食塩」も「精製塩」も、公益法人塩事業センターの「どこにいても誰でも塩を買える状態を保つ」という使命の下、各社が効率的に生産をしているので、価格は非常に安く設定されています。

「食塩」の販売価格は、2024年4月時点では1kgで124円(税抜き)。

「精製塩」の販売価格は1㎏で164円(税抜き)で販売されています。

食塩」と「精製塩」では販売価格に約1.3倍ほどの値段の差があることがわかります。

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カロリーの違いは?

  • 食塩のカロリー:0kcal(100g中)
  • 精製塩のカロリー:0kcal(100g中)

「食塩」も「精製塩」もどちらも0キロカロリーで同じです。

 

食塩相当量の違いは?

「食塩」と「精製塩」は100g中の食塩相当量も異なります。

「食塩」の食塩相当量は99%以上で、「精製塩」の食塩相当量は99.5%以上と決められています。

どちらも99%以上となっており、ほぼ同じ食塩相当量になります。

 

賞味期限の違いは?

「食塩」も「精製塩」も無機質の結晶なので、賞味期限はありません。

何年前のものでも問題なく食べることができます。

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食塩と精製塩の見分け方は?

法律では「食べられる塩の総称」を「食塩」としているため、一括表示の「品名」のところにはどの塩も「食塩」と書いてあるので、ややこしいですよね。

「食塩」か「精製塩」かは、パッケージの裏側にある一括表示と、製造工程の表示を見ることで見分けることができます。

「食塩」は原料が海水で、製造工程のところには「イオン膜、立釜、乾燥」と記載されています。

「精製塩」は原料が天日塩(メキシコ)で、製造工程のところには「溶解、立釜、乾燥、混合」と記載されています。

なお、「立釜」を使用しているからと言って「食塩」や「精製塩」であるという情報をSNSで見かけることがありますが、それは間違いです。

「食塩」や「精製塩」を製造する理由や目的

日本は塩の原料に乏しい、いわば塩貧乏国です。

しかし、塩がなくては人間は生命維持ができず、工業も成り立ちません。

「食塩」や「精製塩」は、日本のどこにいても、誰でも等しく、安価に品質の均一の塩が安定して手に入るようにする、という目的があります。

大量に均一の味を出す必要がある食品加工でも多く使用されています。

1997年に専売制度が終焉し、日本国内で製造される塩は爆発的に増えました。

しかし今でも、塩の生産量のうちのほとんどは「食塩」や「精製塩」が占め、日本の塩産業の屋台骨となっています。

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