この記事を書いた人:日本ソルトコーディネーター協会代表理事青山志穂
目次
無添加の塩ってどういう意味?
基本的に、塩そのものには添加物は含まれていません。
にもかかわらず、「無添加の塩」という言い方をされるのはどうしてなのでしょうか?
塩の専門家である青山志穂先生に聞いてみました。
「無添加の塩」とは、製造過程で塩に添加物を加えずに、「そのままの状態」を維持した塩を指しているのだと思われます。
いわゆる「自然塩」や「天然塩」と呼ばれる塩を指して「無添加の塩」と呼ぶ人もいるようです。
対して、添加物を加えた商品も販売されています。
塩に添加物を加える目的にはいくつかありますが、代表的なものでは「固結防止」と「流動性の向上」「栄養強化」「白さの強化」の4つです。
このあとの項目で詳しく説明します。
スーパーマーケットなどでも手に入れやすい商品を具体例として紹介しておきます。
商品名 | 使用されている添加物 |
食塩 |
なし |
精製塩 |
炭酸マグネシウム |
アジシオ |
グルタミン酸ナトリウム |
伯方の塩 粗塩 |
なし |
瀬戸のほんじお |
なし |
食卓塩 |
炭酸マグネシウム |
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塩に添加される添加物とその目的は?
一般的に塩に添加される添加物は次の6種類になります。
- 塩化カリウム
- 炭酸カルシウム
- 炭酸マグネシウム
- フェロシアン化カリウム(海外産のもの)
- ヨウ素(日本では禁止:海外産のもの)
- クエン酸鉄アンモニウム
これ以外に、本当にごく稀に人工着色料を使用した塩を見たことがありますが、基本的には塩に人工着色料が使用されることはほとんどありません。
花や果実等から抽出したエキスで着色したものは多くあり、これらは「食塩」ではなく「調味塩」というジャンルに分類されます。
塩に使用される添加物①塩化カリウム
塩化カリウム(KCl)は、カリウムと塩素が結合してできた化合物です。
塩化ナトリウム(NaCl)と似た構造を持ちますが、カリウムイオンを含むため、塩化ナトリウムとは異なる特性を持っています。
塩化カリウムを添加している商品としては以下のものが有名です。
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塩化カリウムが塩に添加される効果と目的①塩分の低減
塩化カリウムは、塩化ナトリウムの代替品として使用されることが多く、ナトリウムの摂取量を減らすことを目的とした「低ナトリウム塩」の製造に使われます。
塩化ナトリウムを減らし、その分塩化カリウムを加えることで、同じグラム数あたりの塩分を低減することができます。
近年では、塩化カリウムが腎臓に与える負荷を考慮し、塩化カリウムは使用せずにほかの添加物で味を補う低ナトリウム塩も増えてきています。
塩化カリウムが塩に添加される効果と目的②栄養補給
カリウムは人体にとって重要な栄養素であり、体内の電解質バランスを維持するために必要です。
塩化カリウムを添加することで、塩分の摂取を抑えつつ、カリウムの摂取量を増やす効果があります。
塩化カリウムが塩に添加される効果と目的③味の調整
塩化カリウムは、塩化ナトリウムに比べて苦味や冷たい酸味を感じることがあります。
これを利用し、塩味の中にほかの味を加えることで、味の複雑さを生み出すために利用されることがあります。
塩に使用される添加物②炭酸カルシウム
炭酸カルシウム(CaCO₃)は、塩に添加されることがある添加物の一つです。
炭酸カルシウムそのものは無味無臭であり、添加量もごくわずかなものが多く、塩の味わいに多大な影響を与えるものではありません。
炭酸カルシウムを添加している商品としては以下のものが有名です。
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炭酸カルシウムが塩に添加される効果と目的①抗凝固剤として
炭酸カルシウムは、塩の固結(固まること)を防ぐ抗凝固剤として使用されます。
塩は湿気を吸収しやすく、保存時に空気中の水分を吸って固まってしまうことがあります。
炭酸カルシウムを添加することで、塩の流動性を保ち、さらさらとした状態を維持することができます。
炭酸カルシウムが塩に添加される効果と目的②カルシウムの供給源として
炭酸カルシウムは、カルシウムの供給源としても使用されます。
カルシウムは骨や歯の健康を保つために重要な栄養素であり、塩に炭酸カルシウムを添加することで、食品を通じてカルシウムを補給することができます。
炭酸カルシウムが塩に添加される効果と目的③白色度の向上
炭酸カルシウムは白い粉末状の物質であり、塩の白色度を向上させる効果もあります。
塩の見た目を美しくするために、炭酸カルシウムを添加することで、塩の白さを際立たせることができます。
塩に使用される添加物③炭酸マグネシウム
炭酸マグネシウム(MgCO₃)は、塩に添加されることがある添加物の一つです。
その効果は炭酸カルシウムとほとんど同じで、こちらも無味無臭であり、ごくわずかに添加されるものなので、塩の味わいに大きな影響は与えません。
炭酸マグネシウムを添加している商品としては以下のものが有名です。
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炭酸マグネシウムが塩に添加される効果と目的①抗凝固剤として
炭酸マグネシウムは、塩の固結を防ぐための抗凝固剤として使用されます。
塩は湿気を吸収しやすいため、保存時に固まることがあります。
炭酸マグネシウムを添加することで、塩の流動性を保ち、さらさらとした状態を維持することができます。
炭酸マグネシウムが塩に添加される効果と目的②マグネシウムの供給源として
炭酸マグネシウムは、マグネシウムの供給源としても使用されます。
マグネシウムは、体内の300以上の酵素反応に関与し、筋肉や神経の機能を維持するために重要な栄養素です。
塩に炭酸マグネシウムを添加することで、食品を通じてマグネシウムを補給する効果が期待できます。
炭酸マグネシウムが塩に添加される効果と目的③白色度の向上
炭酸マグネシウムは白い粉末状の物質で、塩に加えることで、塩のさらさらとした流動性を維持しつつ、白色度を向上させる効果があります。
塩に使用される添加物④フェロシアン化カリウム
フェロシアン化カリウム(K₄[Fe(CN)₆])は、塩の添加物として使用されることがあります。
フェロシアン化物については安全性が問題視されてきましたが、塩に使用されるフェロシアン化物は国際的な専門家会議で安全性が確認されたとして、これが添加されている塩も輸入が認められています。
「日本ではフェロシアン化カリウムの添加は禁止されている」という噂もあるようでが、それは誤解です。
ただし、日本国内の製塩メーカーでは使用している商品は見たことがありません。
フェロシアン化カリウムが塩に添加される効果と目的
フェロシアン化カリウムは、塩に添加される際、主に抗凝固剤としての役割を果たします。
フェロシアン化カリウムを添加することで、塩の固結を防ぎ、さらさらとした状態を維持することができます。
フェロシアン化カリウムの安全性と規制について
塩に添加するフェロシアン化カリウムは、食品添加物として安全性が確認されていますが、その使用には注意が必要だとされ、使用量が規定されています。
なぜならフェロシアン化カリウム自体は無害とされていますが、加熱したり酸と反応させたりすると、有毒なシアン化水素ガスを発生させる可能性があるためです。
アメリカやEUで一部の塩に添加されることがあるようですが、国産の塩では見かけたことがありません。
不安な人は、海外のお土産で塩をもらった時は、パッケージに記載されている原材料表示の欄をしっかりとチェックしましょう。
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塩に使用される添加物⑤ヨウ素(ヨード)
ヨウ素は、甲状腺ホルモンの生成に必要なミネラルであり、人体にとって重要な栄養素です。
ヨウ素が不足すると、甲状腺機能に影響を与え、甲状腺腫や甲状腺機能低下症などの健康問題を引き起こす可能性があります。
塩にヨウ素を添加する目的は、甲状腺疾患の予防や、ヨウ素不足を補うことにあります。
中国などの大陸で、内陸部が多くやヨウ素を多く含む海産物を摂取しにくい地域を多く持つ国では、ヨウ素添加塩を通じて、ヨウ素摂取を促進しています。
しかし、日本ではヨウ素を食品添加物として使用することは認められていません。
日本人は要素を含む海藻類(わかめや昆布など)を日常的によく摂取するため、甲状腺腫等の病気にかかるリスクが低いことが理由です。
ヨウ素の過剰摂取によって甲状腺機能の低下症の発症リスクがあるため、過剰摂取には要注意です。
そのため、日本で生産されている塩にヨウ素が添加されていることはありません。
塩に使用される添加物⑥クエン酸鉄アンモニウム
クエン酸鉄アンモニウムは、塩に添加されることがある添加物の一つで、その効果や目的は主に抗凝固剤としての役割を果たします。
クエン酸鉄アンモニウムを添加している塩
- 五島灘の塩 本にがり仕立て(株式会社白松)
クエン酸鉄アンモニウムを添加することで、塩の流動性を保ち、さらさらとした状態を維持することが可能です。
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有機の塩なんて存在しない?
「有機塩」や「オーガニック塩」という言葉を見かけることがありますが、塩自体は有機化合物ではなく、無機化合物です。
「有機」「オーガニック」の定義は有機JAS法によって定められており、その対象物は飲食料品や油脂、農林水産などの有機物に限られます。
そのため、厳密な意味で「有機の塩」というものは存在しません。
塩は塩化ナトリウムを主成分とする無機物質であり、化学構造的には有機物ではありません。
有機の塩について青山志穂先生が1分間でわかりやすく解説している動画はこちら
では「有機の塩」とは?
「有機塩」や「オーガニック塩」という表現は、主にマーケティングや販売の文脈で使われることがあります。
たとえば、塩に添加物が入っていないことや、塩の製造において、伝統的な製法を用いたり、環境への影響を抑えたり、塩田や天日干しを利用している場合、「有機的」や「オーガニック」という表現を使用する販売者や情報発信者がいます。
しかし塩自体は化学的には無機物であるため、この表現は正確な意味での「有機」「オーガニック」とは異なります。
ですので、製塩メーカー自体が「この塩はオーガニックです」ということはありません。
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塩を選ぶ際のポイント
塩を選ぶ際には、「有機」や「オーガニック」という表現に惑わされず、製造方法や成分表示を確認することが重要です。
塩に添加物が含まれているかどうか、自分はそれをどう思うのか。
どのような製造工程を経ているか。
など、自分のニーズに合った塩を選ぶことが大切です。
まとめると、化学的には「有機の塩」は存在しませんが、自然な製法や環境に配慮した方法で作られた塩を指して、「有機」や「オーガニック」と表現されることがあります。
この表現を理解し、塩の製造方法や成分に注目して選ぶことが重要です。
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