塩コラム

この記事を書いた人:日本ソルトコーディネーター協会代表理事青山志穂

ソルトコーディネーター青山志穂
日本の塩の第一人者で塩の専門家として「一家に三塩、食卓に笑顔を」をモットーに活動している青山志穂先生

安い塩と高い塩の違いは?

安価で売られている塩といえば「食塩」や「精製塩」という商品を思い浮かべる人も多いかと思います。

食塩と精製塩
食塩と精製塩

食塩の販売価格は2024年4月現在で1㎏で124円で販売されています。

食塩の販売価格についての詳細はこちら

塩は1回に使う量が1皿1gくらい、パスタを茹でるのにも10g程度しか使いませんので、1キロで124円というのはかなり安いと言っていいでしょう。

それに対して、1㎏で4万円する高価な塩も販売されています。

高知県で作られている田野屋塩二郎というお塩は100gで4000円で販売されていますが、3年ほど予約待ちになるほどの人気です。

それは極端な例としても、200g500円~1200円くらいの塩というのも、スーパーマーケットの店頭に並んでいます。

日本で一番高額な塩はいくらするのか?1分でわかりやすく解説している青山志穂先生の動画はこちら

これだけの価格の差が出るのは、なぜなのでしょうか?

安い塩と高い塩が出来てしまう理由は次の要因が挙げられます。

  1. 生産工程とコストの違い
  2. 目的の違い

それでは塩の専門家である青山志穂先生にわかりやすく解説してもらいましょう。

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違い①生産工程とコストの違い

塩の価格が異なる理由の1つに、生産工程があります。

買い求め安い価格の塩は、大量生産を可能にする効率的なプロセスを採用しています。

例えば、イオン交換膜という、海水からナトリウムイオンと塩素イオンを抽出する膜を使用した場合、飛躍的に海水の濃縮効率をあげることができます。

海水の濃度は約3.4%ですが、それを18%まで濃縮するのにかかる時間は数時間です。

イオン膜の規模が大きくなれば、数万tの海水を連続的に処理することもできます。

そしてそこに人がつきっきりでいる必要がないので、人的コストも削減できます。

または、海外の大規模塩田でコストパフォーマンス良く生産された天日塩を輸入したものを原料に使用したりします。

たとえばメキシコには東京都と同じくらいの大きさの塩田があり、そこで海水を引き入れて、数年かけて完全天日塩をつくります。

こちらは時間はかかりますが、やはり人がつきっきりで塩田の面倒をみる必要がないため、人的コストが抑えられる上、一度に千トン単位と多く収穫できるため、コストが抑えられます。

イオン膜も海外の大規模塩田で生産される天日塩も、省力化と大量生産を実現しているため、コストを抑えることができている、そのため販売価格も比較的安いというわけです。

一方、価格が高めの塩は、人的資源や時間のかかる伝統的な製法を使用することが多く、製造にコストがかかりますし、さらに生産量も多くはないため、大規模生産の塩に比べると価格を高くする必要があります。

たとえば、日本で古くから行なわれてきた「海水直煮製法」という、釜でコトコトと塩を炊いて結晶化させる製法では、シンプル似考えても下記のような工程が必要になります。

  1. 薪を割る
  2. 海水を取水する
  3. 濾過する
  4. 釜に海水を注ぐ
  5. 火をくべて釜に入れた海水を温める
  6. 少なくとも4~24時間煮詰めて濃縮する
  7. 濃縮した海水をさらに4~12時間くらい煮詰めて結晶化させる
  8. 手作業で収穫する
  9. 釜を洗う
  10. 数日置いてにがりをきる
  11. 選別して異物を除去する
  12. 計量して袋詰めする
  13. 袋にラベルを貼る
  14. ダンボールに詰めて出荷する

生産者によってはさらに工程が細かく分かれているところもあり、当然のことながら、製造コストや手間が増加し、最終的な価格は高くなります。

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違い②目的の違い

結論から言えば、大規模生産の塩も小規模生産の塩も、どちらも良い塩です。

価格の違いは、その目的や役割の違いもあると考えられます。

塩がないと人間は生命維持ができません。

すなわち、塩が欠乏すると、国が成り立ちません。

ですから、品質の安定した塩を、 所得に関わらず、どこに住んでいても、誰もが平等に買えるようにするというのは、非常に重要なことです。

さらに、塩は食品加工にも多く使用されています。

毎回塩の品質が違っては、均一な味の製品を大量に生産することを求められる食品メーカーは困ってしまうわけです。

そして、塩の価格が高ければ、それはもちろん加工食品の価格にも影響をするわけで、価格もあがります。

「品質の安定した塩を安価に大量に生産し、全国各地に安定して供給する」

これには非常に重要な意義があるのです。

一方で、「さまざまなミネラルを含んだ昔ながらの塩を使って欲しい」「人々のよりよい健康に寄与する塩を作って届けたい」「伝統的な製法を後世に伝えていきたい」ということも、非常に意義があることです。

その中で、製造にかかる時間やコスト、生産量によって価格は異なってきます。

塩の価格が高いという人がいますが、むしろ年間の生産量が1万トンにも満たない小規模の生産者が現在のような価格で塩を販売しているのは、「できるだけ手に入れやすい価格で」という厚意と感じます。

純粋にコストを積み上げて、利益をしっかり取ろうとするならば、今の5倍くらいの価格になっても不思議ではありません。

結論として、塩の価格は品質の善し悪しに関わりません。

高いからいい塩、安いから悪い塩ということは一切ありません。

塩の価格は、製造にかかるコストや目的によってばらつきがあります。

どの塩を使おうかなと悩んだ時、このブログを思い出してもらい、価格に左右されずに好みを選ぶのに役立てたら嬉しいです。

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青山志穂先生が答えるQ&A「安い塩と高い塩の違い」

2018年にパキスタンの岩塩鉱山を視察してきました。
塩の専門家である青山志穂先生に高い塩と安い塩について色々と質問してみました。

Q1:安い塩を使うのは不安です。健康に悪いですか?

青山志穂

塩の品質に価格は関係ありません。

ナトリウム以外のミネラルを多く含んだ塩が欲しい場合は、パッケージの裏側の栄養成分表示を確認してみるとよいでしょう。

 

Q2:安い塩と高い塩では味に違いはありますか?

青山志穂

塩の味は商品によってそれぞれですが、それは価格とは関係ありません。

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Q3:安い塩で(ナトリウム以外の)ミネラルが豊富な塩というのは売られていないのでしょうか?

青山志穂

どこにラインを引いて「安い」というかにも寄りますが、あります。

価格と品質は関係ありません。

大容量で300円前後の塩でしたら、「瀬戸のほんじお」「伯方の塩粗塩」「赤穂の天塩」「シママース」などはいかがでしょうか。

 

Q4:高い塩だから良い塩ではないというのは本当ですか?

青山志穂

本当です。

価格と品質は関係ありません。

 

Q5:安い塩と高い塩では使い方や用途は違うのでしょうか?

青山志穂

関係ありません。

価格ではなく、塩に含まれるミネラルのバランスや結晶の形、水分量などによって最適な用途が変わってきます。

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Q6:安い塩でも健康にもよく美味しいおすすめの塩ってありますか?

青山志穂

どこにラインを引いて「安い」というかにもよりますし、ナトリウムも健康上必要なものですが、もしナトリウム以外のミネラルを多く含む塩で比較的安価なものなら、「瀬戸のほんじお」「伯方の塩粗塩」「赤穂の天塩」「シママース」などはいかがでしょうか。

 

Q7:安い塩と高い塩は原材料から違うのでしょうか?

青山志穂

関係ありません。

純国産の塩はすべて海水からできています。

比較的安価で販売されている再製加工塩も、原料に使用されているのはオーストラリアやメキシコにある大規模塩田で生産された海水塩です。

 

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