塩コラム

こんにちは。塩の専門家・ソルトコーディネーターの青山志穂です。

「CLASSY」2021年7月号 4P特集

今回は、近年注目を集めている「エレキソルト」技術について、塩の専門家としての視点から、その可能性と課題、そして未来への提案をお届けします。

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エレキソルトとは?

エレキソルト」とは、電気味覚技術を活用して舌に塩味を感じさせる新しい減塩ソリューションです。

エレキソルト公式サイトより

舌に微弱な電流を流すことで、食塩を加えずに“しょっぱさ”を感じさせ、ナトリウム摂取量を抑えながらおいしさを保つというもの。

減塩が求められる現代において、非常に画期的な技術として注目されています。

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塩の専門家が感じたこと

でも、ちょっと待って。

塩味=ナトリウムだけじゃない

私はこれまでに2,400種以上の塩を収集・研究し、世界中の製塩現場を訪ねてきました。

その経験からはっきり言えるのは、「塩味=ナトリウム」ではない、ということです。

自然塩には、ナトリウムだけでなく、カリウム、マグネシウム、カルシウムなど、さまざまなミネラルが含まれており、それぞれが「味」として私たちに感じられます。

塩の味わいは単純な“しょっぱさ”ではなく、うまみ・コク・余韻・バランスといった、複合的な風味で成り立っているのです。

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ソルトコーディネーターが感じるエレキソルト4つの課題

エレキソルト技術は素晴らしい着想ですが、現時点では以下のような4つの課題が見受けられます。

1. 塩味(ナトリウム)に特化しすぎている

他のミネラルが持つ苦味・渋味・まろやかさなどが再現されておらず、“本物の塩の風味”としては未完成です。

 

2. 味の奥行きや余韻がない

塩には「口に残るうまみ」や「時間差で広がるコク」がありますが、電気刺激ではそのような味のグラデーションを表現するのが難しいと感じます。

 

3. 人によって感じ方がバラバラ

味覚は個人差が大きく、電気刺激の感じ方も人によって異なります。高齢者や味覚障害の方には安定しない可能性も。

 

4. 食文化としての体験価値が欠けている

塩は単なる味付けではなく、「記憶」「食感」「香り」と深く結びついています。食の体験は五感の統合であり、電気的な味覚だけでは文化的な満足感に届かないという課題も。

 

では、どうすればもっと“本当の塩”に近づけるのか?

 

ソルトコーディネーターとして、以下のような提案をしたいと考えています。

1. 多種ミネラルの味覚特性を取り入れる

ナトリウムだけでなく、カリウムやマグネシウムの風味特性も再現できれば、より「本物の塩らしさ」に近づきます。

 

2. 出汁や発酵、香りとの融合

うま味や香りと連動した味覚設計を行うことで、電気刺激では足りない「コク」や「満足感」を補える可能性があります。

 

3. 自然塩の風味構成を技術に応用する

私たちの舌が自然塩に「おいしさ」を感じる理由は、ミネラルのバランスや含まれる微量成分にあります。その分析結果を味覚再現技術に活かすことが重要です。

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まとめ|“塩を味わう”から“塩を感じる”未来へ

エレキソルト技術は、減塩の新しい可能性を切り拓く素晴らしい試みです。

しかし、「塩の本質」を理解したうえで開発が進めば、もっと深く、もっとおいしい体験が実現できると信じています。

塩とは、単なる調味料ではなく、文化であり、記憶であり、命をつなぐミネラルの贈り物です。

技術の未来に、自然の叡智と食の知恵が溶け合うことを願ってやみません。

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