この記事の監修者:ソルトコーディネーター協会代表理事青山志穂
目次
塩には賞味期限がない3つの理由
塩には賞味期限がありません。
極端な言い方をすれば、10年前の塩だろうが100年前の塩だろうが、1億年前の塩でも食べることができます。
例えば岩塩は、新しいものでも数百万年前、古いものでは数億年前に結晶化したものを採掘しているわけですが、賞味期限がないので、何の問題もなく食べることができるわけです。
塩に賞味期限がない理由は主に3つあります。
- 化学的に安定性が高いため
- 防腐性が高いため
- 添加物の影響が少ない
これだけ聞くとちょっと難しく感じるかもしれませんが、わかりやすくご説明いたします。
Youtube動画でも簡単にわかりやすく1分間で解説していますのでそちらもご覧ください。
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賞味期限がない理由①化学的に安定性が高い
塩(主に塩化ナトリウムを指す)に賞味期限がない理由の一つとして挙げられる化学的安定性について、詳しく解説します。
塩は化学的に非常に安定した化合物であり、時間が経過してもその化学的性質は変わりにくいです。
化学的安定性とは
化学的安定性は、物質が化学反応を起こしにくい性質を指します。
安定な化合物は、温度、圧力、光、湿度などの外部条件が変化しても、その化学的構造が容易には変わらず、分解したり、他の化合物と反応したりすることが少ないのが特徴です。
塩の化学的安定性
塩(塩化ナトリウム)は、ナトリウムイオン(Na+)と塩化物イオン(Cl-)がイオン結合によって結びついて形成されるイオン化合物です。
このイオン結合は非常に強く、塩を構成するイオンが分離するためには大きなエネルギーが必要です。
そのため、通常の環境下では、塩は他の物質と反応することなく安定した状態を保つことができるわけです。
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環境の変化による影響を受けにくい
塩は以下のような外的環境の変化による品質への影響を受けにくいという特徴があります。
- 温度
- 湿度
- 光や圧力
温度変化による影響
塩は非常に高温でない限り、その化学構造が変わることはありません。
溶解するためには水や他の溶媒が必要ですが、乾燥状態では温度変化による化学的変化はほぼ起こりません。
ちなみに、塩(塩化ナトリウム)の化学構造に変化を与えるためには、非常に高い温度が必要です。
塩化ナトリウムが溶解する温度、すなわち融点は約800℃です。
この温度で塩化ナトリウムは固体から液体へと変化しますが、これは物理的変化であり、化学構造が変わるわけではありません。
塩化ナトリウムの化学構造そのものを変化させるためには、さらに高温、特に分解が起こる温度に達する必要があります。
塩化ナトリウムが化学的に分解する温度は、およそ1400℃以上とされています。
この温度で初めて、塩化ナトリウムはイオン結合が破壊され、化学構造が変化し、ナトリウムと塩素のガスに分解する可能性があります。
この1400℃という高温は、日常生活や一般的な工業プロセスでは遭遇することはほとんどありません。
非常に極端な条件下でのみ起こりうることであり、通常の保管や使用条件下では、塩の化学的構造に変化を与えることはありません。
したがって、塩は化学的に非常に安定しており、賞味期限を気にする必要がないのです。
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湿度変化による影響
塩は湿気を吸収しやすく、高湿度の環境下では空気中の水分を吸着して湿気て溶けてしまうことがありますが、これは塩の化学的構造が変わるわけではなく、単に水分を吸収するだけで、化学的変化ではなく物理的変化です。
そのため、塩が湿気たからといって賞味期限が発生するというようなことはありません。
なお、塩が湿気ないようにするためには、塩を保管する際に密封容器に入れるなどして湿気を避けることをおすすめします。
これにより、塩が湿気を吸収して固まるのを防ぐことができます。
光や圧力による影響
日常生活の環境下で、光や圧力が塩の化学的構造に影響を与えることはありません。
それほど塩は安定した性質を持っています。
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賞味期限がない理由②防腐性が高い
塩は天然の防腐剤として機能し、微生物の成長を抑制します。
これは塩が水分を吸収し、微生物が生存に必要な水分を奪うためです。
塩は食品を乾燥させ、微生物の成長を阻害することで、食品を長期間保存可能にします。
塩の防腐性を活用し、塩は古代から食品保存の方法として広く利用されてきました。
以下に、塩を使った代表的な古代からの食品保存法を紹介します。
塩の高い防腐性を活かした保存食品
干物(ドライフィッシュ)
魚に塩で刷り込んだり、濃度の濃い潮水に漬けたあと、太陽の下で乾燥させる方法です。
これにより、魚は長期間保存が可能になります。
北欧、地中海地域、アジアなど、世界中の多くの海岸部で古代から実践されてきました。
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干し肉(ジャーキー)
肉を薄くスライスして塩を振り、乾燥させることで保存します。
肉から水分を取り除くことで、腐敗を防ぎます。
北アメリカの先住民、南アメリカ、アフリカの遊牧民など、世界中で見られる保存法です。
漬物
野菜や果物を塩水または塩で漬け込むことで、腐敗菌や腐敗に導く微生物の活動を抑制しながら、有用菌の活動を促進し、発酵させることができます。
地中海地域、アジア、ヨーロッパなど、多湿な地域で特に重宝されてきました。
塩蔵肉(生ハム、塩豚など)
肉を大量の塩で完全に覆い、冷暗所で保存する方法です。
塩が肉から水分を奪い、腐敗に導く微生物や菌の成長を抑えます。
中世ヨーロッパやアジアなど、冷蔵技術がない時代に広く用いられました。
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塩辛
小魚やイカなどの海産物を塩で漬け混むことで発酵させ、長期保存を可能にするととともに、発酵による独特のうまみや風味を醸成します。
日本、韓国などの東アジア地域で伝統的に作られています。
味噌と醤油
味噌や醤油の製造過程では、塩が重要な役割を果たします。
塩は発酵を助けるとともに、不要な微生物の成長を抑制し、味噌や醤油特有の風味を守ります。
これらの保存法は、塩の防腐性を利用して、冷蔵や冷凍技術がなかった時代に食品を安全に保存するための重要な手段でした。
現代では、これらの方法は伝統的な食文化として引き継がれるとともに、特定の風味を楽しむためにも用いられています。
その効果は、塩が微生物の成長を抑制する複数のメカニズムに基づいています。
以下に、塩の防腐作用に関する詳細を説明します。
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賞味期限がない理由③添加物の影響が少ない
塩の賞味期限がない理由として「添加物の影響が少ない」という点は、塩自体の高い化学的安定性と、添加される添加物の種類や量が限られており、それらが塩の保存性に大きな影響を与えにくいためです。
その結果、塩は非常に長期間安定して保管できる食品となっています。
ただし、添加物が含まれる場合は、それらの添加物に関連する保管条件や使用上の注意が適用されることがあります。
前述のとおり、塩が他の多くの食品と比較して添加物による影響を受けにくい理由には、塩自体の性質と添加物の種類に依存するいくつかの要因があります。
以下にその仕組みを詳しく解説します。
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添加物の種類
よく塩の添加物として使用されるものとして、ヨウ素化塩に含まれるヨウ素や、固結防止剤として使用される炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、栄養強化のための塩化カリウムなどがあります。
これらの添加物は、塩の保存性や品質を保つために加えられます。
ヨウ素は、中国などの大陸に位置する国で、内陸部に居住する人たちがその食生活からヨウ素不足になりがちなため、ヨウ素欠乏症を防ぐために加えられることがあります。
固まりを防ぐために加えられる炭酸マグネシウムや炭酸カルシウムなどの固結防止剤は、添加されたとしても非常に少量です。
また、これらの添加物はそれ自体が品質の安定性を持ち、変化しづらいため、塩の流動性を保つことには役立ちますが、塩自体の化学的安定性や保存性にはほとんど影響しません。
結論
これらの理由から、塩には賞味期限がありません。
ただし、保管方法によっては物理的な変化(例えば湿気による固まり)が生じることがあるため、適切な保管が推奨されています。
こちらの記事もご覧ください。
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