目次
「ミネラル豊富な塩」という表現について
執筆者:日本ソルトコーディネーター協会代表理事青山志穂
日本ソルトコーディネーター協会代表理事青山志穂
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ミネラル豊富な塩ってなに?
メディアなどでよく目に、耳にする「ミネラル豊富な塩」という表現。
実はこれ、一部間違っているということをご存知でしょうか?
今回はそれについて解説していきたいと思います。
塩に含まれるナトリウムが少なければ、その分ほかのマグネシウムなどのミネラルの構成比が高くなります。
よく、これらの「ナトリウム以外のミネラルが豊富に含まれている塩」を指して、「ミネラル豊富な塩」という表現が使われています。
しかし、たとえナトリウムしか入っていない塩であっても、ナトリウムもミネラルなので、「ミネラル豊富」なのです。
それに、そもそも「豊富」って、なにに比較して豊富って言っているのでしょうか???
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そもそもミネラルってなに?
ミネラルとは、自然界に存在する無機物質のことで、特定の化学組成と結晶構造を持ちます。
たんぱく質、脂質、炭水化物、ビタミンにミネラルが加わり、五大栄養素と呼ばれています。
ミネラルは地球の岩石、土壌、水などに含まれ、自然環境に広く分布しており、もちろん塩にも含まれています。
そして、その形成過程、組成、物理的特性に基づいて分類され、人間と動物の健康においても、ミネラルは重要な役割を果たします。
ミネラルは体内では、骨や歯の形成、神経伝達、筋肉の収縮、血液の凝固、さまざまな酵素反応など、生命維持に必要な多くの生理的過程に関与しています。
必要量は微量であるものの、これらミネラルは体内で生成されないため、食事から摂取する必要があります。
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ミネラルの種類
ミネラルには、体にとって必要な量が比較的多い「主要ミネラル(マクロミネラル)」と、微量で必要な「微量ミネラル(トレースミネラル)」の二つのカテゴリーがあります。
主要ミネラル
- カルシウム
- リン
- マグネシウム
- ナトリウム
- カリウム
- 塩素
- 硫黄
主な微量ミネラル
- 鉄
- 亜鉛
- 銅
- セレン
- ヨウ素
地球科学の分野では、ミネラルは地球の構成要素としての役割も持ち、岩石を形成したり、地殻の化学的、物理的性質を決定づける要素となっています。
ミネラルは、その美しさや希少性から宝石としても価値を持つものもあります。
その中でも食べられるものが岩塩として流通しています。
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ミネラルの役割と働き
ミネラルは人体にとって欠かせない無機栄養素であり、骨や歯の形成、酵素やホルモンの活動、体内の水分バランスの維持、神経伝達、筋肉の収縮など生命活動の基本的な機能をサポートします。
体内では自ら生成することができないため、食事を通じて摂取する必要があります。
ミネラルにはカルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅などがあり、それぞれが特有の働きを持ちます。
例えば、カルシウムは骨の健康を支え、鉄は血液中のヘモグロビンの成分として酸素輸送に関わります。
亜鉛は免疫機能の正常化や傷の治癒に必要であり、マグネシウムはエネルギー産生や神経系の機能に関与しています。
適切なミネラルの摂取は全身の健康を維持するために不可欠です。
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塩とミネラルは違うもの?
塩は海水中に溶けて存在しているミネラルが結晶化したものであり、塩はいわば「ミネラルの塊」と言えます。
塩が「ミネラルの塊」と見なされる理由は、その成分と形成過程にあります。
ミネラルとは、特定の化学組成を持ち、通常は無機の結晶形態をとる天然物質です。
塩はこの定義に完全に当てはまり、結晶構造を形成します。
これらの結晶は、海水が蒸発する過程や地下の岩塩層として堆積する過程で形成されます。
塩の形成は、主に二つの方法で行われます。
一つ目は、海水や塩湖の水が蒸発し(または蒸発させて)、そこに含まれるミネラルが結晶化するプロセスです。
二つ目は、地下の岩塩層が、地質学的な過程によって地表に押し上げられることで形成されます。
これらの岩塩層は、数百万年前の古代海や塩湖が蒸発してできたもので、大元を辿れば岩塩も昔は海だったわけです。
塩は、その純粋な形態であるナトリウムだけでなく、マグネシウム、カリウム、カルシウム、鉄、亜鉛などの他のミネラルを微量に含むことがあります。
これらの微量ミネラルは、塩が採取される環境や製法によって異なります。
人体にとって、塩は重要な栄養素であり、体液のバランスを保つために必要なナトリウムやほかのミネラルを提供してくれているのです。
したがって、塩が「ミネラルの塊」と言われるのは、上記のような自然な形成過程、固有の化学組成、結晶構造、そして人間の健康に対するその重要性によるからにほかなりません。
自然界に存在し、特定の化学的特性を持つことから、塩は地質学的、生物学的な観点からミネラルとして分類されるのです。
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塩に含まれるミネラルの種類と主な働き
塩は、主成分である塩化ナトリウム(NaCl)のほか、多種多様なミネラルを微量含みます。
これらのミネラルは、塩の採取源や製造過程により異なる特性や風味を持ち、私たちの健康にも寄与しています。
以下は、塩に主に含まれるミネラルの種類とその役割についての解説です。
ナトリウム (Na)
塩の最も主要な成分。
ナトリウムは体内の水分バランスと電解質平衡を維持する重要な役割を担っており、細胞外液の主要な成分です。
血圧の調節、神経伝達、筋肉の収縮など、生命維持に必要な多くの生理的プロセスにも深く関与しています。
ナトリウムは、栄養素の吸収と体内での輸送にも重要です。
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塩素 (Cl)
塩素は主に胃酸の主成分として消化を助ける役割を果たします。
また、体内の水分バランスとpHバランスの維持、細胞内外の液体の圧力調節にも重要で、ナトリウムやカリウムと共に電解質バランスを調整します。
これにより、神経伝達や筋肉の動きも支えられます。
マグネシウム (Mg)
体内で4番目に多いミネラルです。
マグネシウムは細胞内のエネルギー生成に必須であり、DNAおよびタンパク質の合成、筋肉の収縮とリラックス、神経伝達の正常化に関与します。
また、カルシウムやカリウムと共に心血管系の健康を支え、骨の形成と維持にも重要な役割を担っています。
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カルシウム (Ca)
カルシウムは骨と歯の形成と維持に不可欠で、血液の凝固、神経伝達、筋肉の収縮、心臓の機能など、多くの生理的プロセスに重要な役割を果たします。
また、細胞内信号伝達や酵素の活性化にも関与し、体内のさまざまな機能を調整します。
カリウム (K)
カリウムは細胞内液の主要なミネラルで、体内の水分バランス、電解質バランスの維持、神経伝達と筋肉の収縮、心臓の健康と正常な心拍維持に不可欠です。
また、血圧の調節にも関与し、高血圧のリスクを減少させる効果があります。
適切なカリウム摂取は全身の機能を正常に保つため重要です。
硫黄は、タンパク質の構成成分であり、特に髪、皮膚、爪の健康に重要です。
また、体内のデトックス作用を助け、軟骨や結合組織の形成にも関与します。
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亜鉛
亜鉛は免疫系の強化、細胞の成長と修復、DNAとタンパク質の合成に必須です。
また、味覚と嗅覚を維持し、傷の治癒を加速します。
免疫反応、生殖系統の健康、皮膚の健康にも重要な役割を担い、細胞の酸化ストレスからの保護にも関与しています。
硫黄
硫黄は体内のアミノ酸メチオニンとシステインの重要な成分で、髪、皮膚、爪を健康に保つ役割を果たします。
また、重要な抗酸化物質であるグルタチオンの合成に不可欠で、関節と組織の健康にも寄与し、解毒作用を支援します。
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鉄 (Fe)
鉄はヘモグロビンの主要成分であり、体内の酸素運搬と赤血球の形成に不可欠です。
エネルギー産生に関わる酵素の機能にも必要で、免疫系の正常な作動と細胞の成長にも寄与します。
鉄不足は貧血を引き起こし、疲労感、集中力の低下、免疫力の低下につながる可能性があります。
ヨウ素 (I)
ヨウ素は甲状腺ホルモンの製造に必要で、これらのホルモンは体の代謝率、心臓の機能、神経系の発達、および成長を調節します。
ヨウ素不足は甲状腺機能低下症や発育不全のリスクを高め、特に妊娠中や幼少期の発達に重要な影響を与える可能性があります。
これらのミネラルは、塩を単なる調味料以上のもの、つまり健康へのプラス効果が期待されます。
ただし、これらのミネラルが健康に与える影響は摂取量に依存しますし、塩だけで不足しているミネラルを補おうとするとナトリウムの過剰摂取に繋がりますので、注意が必要です。
「日にち薬」という言葉があるように、毎日食べるものだからこそ、その質にこだわって日々積み重ねていくことが大切です。
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ミネラルの相互関係も重要
なお、ミネラルには関係性が深い組合わせがあります。
ここでは代表的な組合わせを3つ解説します。
- カリウムとナトリウム
- マグネシウムとカルシウム
- リンとカルシウム
カリウムとナトリウムの関係性
カリウムとナトリウムは体内の水分バランスと電解質のバランスを維持するために互いに関連し合っています。
ナトリウムは体内の水分を保持し、血圧を上昇させる傾向がありますが、カリウムは血圧を下げる作用があり、過剰なナトリウムを排出するのを助けます。
これら二つのミネラルのバランスが良好であると、心臓病や高血圧のリスクを減少させることができます。
また、それぞれ細胞外液と細胞内液に存在するため、適切なバランスを保つことでむくみなどの症状が起きないようにコントロールすることができます。
適切なカリウムとナトリウムの摂取は、健康維持に不可欠です。
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マグネシウムとカルシウムの関係性
マグネシウムとカルシウムは共に骨の健康と神経筋機能に重要なミネラルです。
マグネシウムはカルシウムの体内での利用を調節し、過剰なカルシウムが細胞内に入るのを防ぎます。
これにより、心臓や筋肉の適切な機能を支え、カルシウムの骨への適切な取り込みを促進します。
両者のバランスが重要で、マグネシウムの不足はカルシウムの代謝異常につながり、骨密度の低下や心血管疾患のリスク増加に繋がることがあります。
リンとカルシウムの関係性
リンとカルシウムはともに骨の形成と維持に不可欠なミネラルで、体内で密接に相互作用します。
これらは骨組織の主要成分であり、健康な骨と歯のためにバランスよく摂取する必要があります。
リンの過剰摂取はカルシウムの吸収を阻害し、骨の健康に悪影響を及ぼす可能性があるため、適切な比率での摂取が推奨されます。
カルシウムとリンの適切なバランスは、骨密度を維持し、骨粗しょう症のリスクを減少させるのに重要です。
インスタント食品にはリンが多く含まれていることが多く、インスタント食品を日常的に摂取している場合、カルシウムの吸収が阻害されている可能性があるので、注意が必要です。
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釜炊き塩より天日塩のほうがミネラル豊富?
時々SNSなどで見かけるこの説の答えは明確に「No」です。
釜炊き塩と天日塩のミネラル含有量に関する一般的な認識は、製法の違いから来ています。
釜炊き塩は海水を大釜で加熱し、蒸発させて塩を生成します。
この過程では、加熱により一部のミネラルが失われると考えられがちです。
一方、天日塩は海水を浅い塩田に張り、太陽の光と風で自然蒸発させて塩を作ります。
この方法では、より自然な条件下で蒸発が進むため、ミネラルがより多く残るとされています。
しかし、塩に含まれるミネラルの量は、原料となる海水のミネラル組成、製造過程での条件、塩を精製する過程での取り扱い方に大きく依存します。
釜炊き塩でも塩化ナトリウムの構成比が80%以下のものもありますし、天日塩でも構成比が99%以上のものもあります。
重要なのは、どちらの製法も海水から塩を作る基本的なプロセスに変わりはなく、最終的なミネラル含有量は製造プロセスの細かな管理により左右されるということです。
また、科学的な分析によってのみ、具体的なミネラル含有量を正確に知ることができます。
一般的に言われる「天日塩が釜炊き塩よりもミネラルを多く含む」という説には一貫した科学的根拠がありません。
なぜなら、ミネラルを変化させるためには何百度という高温が必要なのですが、一般的な製塩過程(焼成を除く)において、海水または塩の結晶にはそれほど高い温度が加わることはありえないからです。
私はこれまでに2000種類以上の塩を見てきましたが、「天日塩だから釜炊き塩よりミネラルを多く含む」「この塩には80種類以上のミネラルが含まれている」というようなことを謳っている製品においては、公開されているミネラルの分析表は海水そのものの分析表であり、塩を分析した成分表を公開しているメーカーを見たことがありません。
疑問に思い「80種類以上のミネラルが含まれている」と謳っている輸入塩の輸入商社に分析表の提示を問い合わせたところ、「成分表はない。現地の人がそう言っていたから」という返答でした。
したがって、どちらの塩がより多くのミネラルを含むかを一概に言うことは難しく、それぞれの塩の特性を理解し選択することが重要です。
釜炊きだから、天日だからと結論づけることはできないのです。
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総括
「ミネラル豊富な塩」という表現の背景には、「ほぼナトリウムのみで構成された塩は良くない」という考えがあるように感じています。
私は、塩にはどれも最適な役割があると思っているので、「ほぼナトリウムのみで構成された塩」が悪者だとは思いませんし、もしそれが悪者であるならば、いわゆる自然塩・天然塩と呼ばれる塩の中にも、ほとんどナトリウムだけで構成された塩がたくさんあるのはどう説明するのか?とも思います。
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